2010-03-08 ■ 読書 平井和正『狼のレクイエム 第一部』 読了。 前巻『狼の怨歌』から登場する非情の殺し屋・西城恵がどんどん主人公になっていく――後付けではあるものの、シリーズの一応の主人公・犬神明と似たような過去を持つ、犬神のネガである、ということが判る――前半部から一転、絶望的な戦いを開始した犬神明と虎4[フー・スー]のささやかな日常への憧憬と別離が描かれる後半部は、先に何が待ち受けているか知っているからかもしれないけど、哀切と寂寥を感じる。 けだし、青春とはこういうものなのだとは、『銀河鉄道999』が語ってもいるけれど、個人的にはアパートを引き払う際の虎4の言動に、生まれて初めてこの種の寂寥を感じた記憶がある。 中島望『一角獣幻想』 読了。 なかなか面白かった。 基本的に、ストレートな内容のアイディアストーリーに若干無理やり気味のどんでん返しがあって、しかしそのどんでん返しが全部ダークなものではあっても、どこか「想定範囲内」だったりする辺りに、個人的には藤子・F・不二雄の不条理短編――「ミノタウロスの皿」とか「コロリ転げた木の根っこ」とか――を思い出した。「母願う」とか「箱舟荘殺人事件」、「卵生少女」なんかはまんま藤子・F・不二雄だよなー。