• 中島望一角獣幻想[ユニコーンナイトメア]
     ルシフェル、14歳』と続編地獄変で、平井和正風「熱病」小説の書き手として、個人的に認識した中島望氏は、いつの間にか新たな方向を模索して、本格ミステリとかライトなSFを書いておられたようで、この『一角獣幻想』も、そんな新たな方向を模索した結果と思しい、「色々やってみました」な書き下ろし短編集。
     とは言うものの、作者のコメントに曰く、
    「『こども』と『ホラー』というキーワードでやってみました」
     ということなので、ある程度イメージは共通しているというか、「子供――社会的に『そう』であったり、物語の中の人間関係の力学の上で『そう』であったりと多様では有るものの――がヒドイめに遭う」という展開が共通している。
     今のところ読んだ中では、冒頭の「花いちもんめ」が、ストレートな怪談ではあるものの、それゆえに非常に怖かった。
     ホラー好きであれば、この一編のためにだけ買っても惜しくはない。

一角獣幻想 (講談社ノベルス)

一角獣幻想 (講談社ノベルス)

  • 笹公人『念力図鑑』
     最新歌集『叙情の奇妙な冒険』が面白かった、歌人笹公人氏の歌集。
     どれも五七五七七のリズムに載せて、珍妙で懐かしく、明らかにオタ臭い世界を醸し出す極上の短歌ばかりで、この歌集のうちでは、特に諸星大二郎『マッドメン』にインスパイアされたという連作「転校生はガワン族」が面白かった。

     中に時々ホラーっぽい歌があるのもうれしい。一番気に入ったものを抜書きしてみる。
    「真夜中の幽霊ビルこそかなしけれ汚れた窓に女映して」
     ――黙読した後に音読すると、最後の七語でゾッとする。

念力図鑑

念力図鑑